Windows 11を使用していて、「インターネットの速度が遅い」と感じたことはありませんか? 有線接続をしていても、通信が安定しない場合や、速度が思うように出ない場合があります。
その解決策のひとつとして、ネットワークアダプターの**送信バッファー(Transmit Buffers)と受信バッファー(Receive Buffers)**を最大化する方法があります。
本記事では、Windows 11でこの設定を変更する方法と、その効果について詳しく解説します。
送信バッファー・受信バッファーとは?
送信バッファー(Transmit Buffers)とは?
送信バッファーは、ネットワークアダプターがデータを送信する際に一時的に保存する領域です。 この値を大きくすることで、一度に処理できるデータ量が増え、通信の安定性が向上します。
受信バッファー(Receive Buffers)とは?
受信バッファーは、外部から送られてきたデータを一時的に格納する領域です。 この値を増やすことで、データの取りこぼしを減らし、スムーズな受信が可能になります。
特に高速なインターネット回線(光回線など)を利用している場合、デフォルトの値ではボトルネックになる可能性があります。
送信バッファー・受信バッファーを最大に設定する方法
Windows 11で送信バッファーと受信バッファーを最大にするには、以下の手順を実行します。
1. デバイスマネージャーを開く
Windowsキー + X
を押して、[デバイスマネージャー] を選択。- [ネットワークアダプター] を展開し、現在使用している有線LANアダプターを探す。
- 例: Intel Ethernet Adapter、Realtek PCIe GBE Family Controller など
2. ネットワークアダプターのプロパティを開く
- ネットワークアダプターを右クリックし、[プロパティ] を選択。
- [詳細設定] タブをクリック。
3. 送信バッファー・受信バッファーの設定を変更する(※環境によってはパフォーマンスが低下する可能性あり)
- [プロパティ] の一覧から以下の設定を探す
- 送信バッファー(伝送バッファー・Transmit Buffers)
- 受信バッファー(Receive Buffers)
- それぞれの値を上げます。ただし、環境によってはパフォーマンスが低下する場合があるため、変更後にネットワーク速度を確認し、適切な値を選択することを推奨。
- [OK] を押して適用。
4. 設定を反映させるためにPCを再起動
設定を変更した後、PCを再起動すると最適化が反映されます。
MTU値を最適化する方法
MTU (Maximum Transmission Unit) 値の最適化は、ネットワーク通信のパフォーマンス向上や安定化に役立ちます。MTUが適切でないと、パケットの断片化(フラグメンテーション)が発生し、通信速度の低下や接続の不安定化を招くことがあります。
MTUとは?
MTUは、ネットワーク上で一度に送信できる最大データサイズ(バイト単位)を指します。インターネット上の一般的なMTUは1500バイトですが、回線の種類や通信経路によっては最適な値が異なります。
MTU最適化のメリット
- 通信速度の向上: パケットの断片化が減少し、効率的なデータ転送が可能になります。
- 接続の安定化: パケットロスが減り、特にオンラインゲームやビデオ会議などリアルタイム性の高い通信で効果を発揮します。
MTUの最適値を見つける方法
MTUの最適値は、ping
コマンドを使って確認するのが一般的です。
- コマンドプロンプトを管理者として実行:
- Windowsのスタートメニューで「cmd」と入力し、「コマンドプロンプト」を右クリックして「管理者として実行」を選択します。
- pingコマンドで最適値を探索:
- 以下のコマンドを実行します。
ping -f -l [データサイズ] [接続先のIPアドレスまたはドメイン名]
-f
: パケットの分割を禁止するオプション-l [データサイズ]
: 送信するパケットのデータサイズを指定するオプション[接続先のIPアドレスまたはドメイン名]
: pingを送信したい相手(例:google.com
、ルーターのIPアドレスなど)
- 最初は大きめのデータサイズ(例: 1500)で試します。
ping -f -l 1500 google.com
- 「Packet needs to be fragmented but DF set.」のようなメッセージが表示された場合、パケットが大きすぎて断片化されてしまうことを意味します。この場合、
-l
の値を少しずつ減らして再度試します。 - 例えば、1472でpingが成功し、1473で失敗した場合、断片化されずに送信できる最大のデータサイズは1472バイトです。
- 以下のコマンドを実行します。
- MTU最適値を計算:
- ping送信に成功した最大のデータサイズに「28」を加えた値がMTUの最適値になります。これは、IPヘッダやICMPヘッダなどのプロトコル情報が28バイト追加されるためです。
- 例: ping成功データサイズが1472バイトの場合、MTU最適値は 1472+28=1500 バイトです。
- もし、ping成功データサイズが1472以外の場合(例: 1424)、最適MTUは 1424+28=1452 などとなります。
MTU値を設定する方法
MTU値の設定は、PCのOS、ルーターなど、設定したい機器によって異なります。
1. Windowsの場合
- コマンドプロンプトを管理者として実行します。
- 現在のネットワークインターフェースの情報を確認:
netsh interface ipv4 show interface
- 「イーサネット」などの接続名と、その隣にある「Idx」の数値をメモします。(例: 「Idx」が「3」の場合)
- MTU値を設定:
netsh interface ipv4 set interface [Idxの数値] mtu=[最適MTU値] store=persistent
- 例: Idxが3で最適MTU値が1452の場合
netsh interface ipv4 set interface 3 mtu=1452 store=persistent
- 例: Idxが3で最適MTU値が1452の場合
2. ルーターの場合
- ルーターの管理画面にログインし、「詳細設定」や「その他の設定」などからMTU値を設定できる項目を探します。
- 設定方法はルーターの機種によって異なるため、お使いのルーターのマニュアルを参照してください。
注意点
- LAN側とインターネット側で異なる場合がある: LAN内のMTUとインターネット側のMTUは異なる場合があります。特にインターネット側はプロバイダや回線の種類によって最適な値が異なります。
- 経路上の全てのデバイスで一貫性を持たせる: パケットが通過する全てのデバイス(PC、ルーター、ISPの機器など)でMTU設定が一貫していることが重要です。MTU値に一貫性がないと、パケットロスや接続中断の原因となることがあります。
- 安易な変更は避ける: 通常、MTUの初期値は最適な値に設定されていることが多いです。通信に問題がない場合は、無理にMTU値を変更する必要はありません。
- PPPoE接続の場合: PPPoE接続では、通常のイーサネットヘッダに加えてPPPoEヘッダ(8バイト)が追加されるため、最大のMTUは1492バイトとなります(1500 – 8 = 1492)。
MTUの最適化は、通信トラブルの解消やパフォーマンス向上に有効な手段の一つですが、設定を誤るとかえって通信が悪化することもあるため、慎重に行いましょう
まとめ
Windows 11でのインターネット速度向上のために、送信バッファー・受信バッファーを最大に設定し、MTU値を最適化する方法を解説しました。
この記事のポイント
✅ 送信バッファー・受信バッファーを最大に設定すると通信が安定
✅ 手順は[デバイスマネージャー] → [ネットワークアダプター] → [詳細設定] から変更
✅ MTU値を最適化するとデータ転送がスムーズに
✅ さらにDNS変更をすると効果的
これらの設定を実施し、より快適なインターネット環境を構築しましょう!